急性心筋梗塞発症⑥ 運動負荷試験

発症から職場復帰まで

 主治医の先生が病室に来られた朝、どこまで回復するのか聞いてみた。「退院する前日ぐらいに運動負荷試験をするのでその結果次第ですね」と言われた。リハビリ時、理学療法士さんに運動負荷試験の事を詳しく聞いてみた。

 運動負荷試験、それは顔に呼気ガスマスク、胸に心電図モニターの電極を貼って、血圧計を腕につけて、何人かの医療関係者に囲まれながらエルゴメーターという名のエアロバイクをこぐらしい。そして有酸素運動から無酸素運動にかわる負荷を計測する。今の心臓が負担になる負荷量を算出するそうだ。OKがでるまでひたすらしゃべらずに自転車をこぎ続けるそうだ。

 今の自分にできることは、試験までリハビリを続け、減塩食をしっかり食べ、薬を忘れず飲んで、夜更かしせずによく寝るということだ。まあ、毎日行っていることだ。試験まで当たり前のことを当たり前に行う。

 土日祝は理学療法士さんが休みなので、自主的に病棟内を歩く。無理をしないように、しんどくなったら休み、ぼちぼちと続ける。最初自主的に歩くとき、補助なくひとりで歩けることがうれしかった。少し自由になれた気がした。続けているうちにそれが当たり前になり、もっと歩けるようになりたいと思う。でも無理しないように気をつける。無理は禁物だ。

 そして運動負荷試験当日になる。16時ぐらいから始まる。もう夕方だな、この試験が終われば明日退院だ。まあがんばっても結果は変わらないらしいので気楽にいこう。最初はそう思っていた。

 しかし顔に呼気ガスマスクを装着して、胸に電極シールつけて、腕に血圧計をつけると圧迫感がどうしてもある。眼鏡も外さなければならず、ド近眼なのでよく見えない。しかたなく機械式メトロノームのリズムに合わせて同じ回転数で自転車のペダルを足をこぐことになった。見えないけど6人ぐらいの医療従事者の方たちに見られているのは結構緊張した。この状況は緊張する。しょうがない。

 だんだん負荷が強くなってきて足が重くなってきた。けど同じ回転数をキープし続けなければいけない。リハビリの時はいつも負荷40~50Wぐらいだったのになんか3ケタになっている。メガネがないからぼんやりとしか見えないけど3ケタになっている。「重すぎる!」と心で叫んでいたら終了となった。ゼーゼーといいながら肩で息をしている。久しぶりに空気が甘く感じる。この不思議な疲れ方。明日は筋肉痛かもしれないと覚悟した。まあ実際はならなかったのだが。「疲れた」と心の声。汗もじっとりと出ていて、「はやくシャワーを浴びて夕ご飯を食べたい」と病室まで帰りの道中思っていた。

 結果は夕食後に理学療法士さんが伝えてくれた。ギリギリ有酸素運動のMETSは2.85。心拍数(BPM)は74。AT1分前の負荷量(W)は39。今日の試験最終負荷量は125だった。125?!
「METS」とかいて「メッツ」とよぶ。この動作は何METSと書かれた表をもらった。その表によれば、ゆっくり歩くMETSが2.8で普通に歩くMETSが3.0だ。僕のギリギリ有酸素運動METSは2.85、つまり僕は普通の速さで歩くと無酸素運動の域に入り、心臓に負担がかかるらしい。ゆっくり歩くってどれくらいだろう?普通ってどれくらいのはやさだ?

 階段を下りるMETSも3.0、階段を上がるなんかはMETSは8.0だった。はるかに2.85を超えている。家の僕の部屋は2階にある。上れるのか?トイレは1階にあるし大丈夫かな?と不安になった。休憩しながら、ゆっくりなら大丈夫だそうだ。よかった。と少し安心した。

 家に帰ってからのリハビリの仕方も説明してくれた。「毎日エアロバイクをこいでください」ということだった。内容はこんな感じ。
・負荷40Wのペダルの重さ。
・1分間に50回転の速さでペダルを回す。
・脈拍は70ぐらいまでそれ以上になる時は負荷を下げるか休む。
・最初は20分ぐらいが目標
・慣れてきても負荷は上げないで時間をのばす、20分以上が理想。

 階段を上ることはできるけどゆっくりと無理しないように気を付けてあがるように注意された。もう少し動けるもんやと思っていたのでショックだった。先生や理学療法士さんが予想していた数値よりも低かったようだ。落ち込んでしまう。でもこれが現実。無理をせずゆっくりリハビリするしかない。

 元野球選手イチローさんの言葉を思い出す。
「小さなことを積み重ねることがとんでもないところへ行くただ一つの道」

 僕にとってはなにげない日常の生活がとんでもないところなのだろうか?すべてが元に戻ることはないかもしれない。けど、リハビリに減塩食に薬を毎日続ける。そして今までの日常を取り戻していくしかない。明日退院だ。新しい生活がはじまる。病院内はいつも室温が24℃ぐらいだ。段差もなく管理された減塩食と薬があった。これが理想なのだろう。これからの生活に不安もある。でも病院でみについた早寝早起きなどの生活習慣や減塩食になれてきた味覚を大事にしていこう。少しずつ無理せずにリハビリを続けていきたいと思った。

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